環境
気候変動への取り組み
<シナリオ>
温暖化対策の進展によってさまざまなシナリオが考えられる中、以下シナリオを参照しました。
今世紀末までの世界の平均気温の上昇が1.5℃に抑えられるシナリオと、4℃まで上昇するシナリオについて、気候変動に伴い生じ得るリスクと機会について洗い出し、事業への影響の分析を行い、2027年時点(短期)・2030年時点(中期)・2050年時点(長期)の影響について考察しました。
設定シナリオ |
1.5℃シナリオ |
4℃シナリオ |
世界観 |
産業革命前の水準と比較し、平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるシナリオ。持続可能な社会の発展をかなえるため、大胆な政策や技術革新が進められる。脱炭素社会への移行に伴う社会変化が、事業に影響を及ぼす可能性が高い社会になる。
〈事例〉
●炭素税の導入・炭素価格の上昇
●自動車の電動化シフト、再生可能エネルギーの拡大
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現状を上回る温暖化対策をとらず、産業革命時期比で4℃程度上昇する。成り行き任せに近く、社会の変化は起こらないが、気候変動に伴う異常気象や災害が事業に影響を及ぼす可能性が高くなる。
〈事例〉
●大雨による洪水被害の増大
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参照シナリオ |
「NZE2050」
(IEA WEO2024)
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「SSP5-8.5」
(IPCC AR6)
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*シナリオ分析を実施した期間(2025年4月~7月)
<移行リスク一覧>
リスク/機会 |
リスク・機会
・要因項目 |
事業への影響 |
指標 |
時間軸 |
影響
評価 |
移行 |
政策 |
カーボンプライシングメカニズム |
炭素税の導入に伴う、輸送に使用される化石燃料に対する課税が強化されることによる、輸送関連コスト増加 |
支出 |
中期
長期 |
大 |
技術 |
低排出技術および製品への移行 |
環境配慮型車両への移行に伴う、EV輸送対応のための充電設備を各拠点に整備する投資負担に加え、輸送機材の電動化に関する設備更新コストの増加 |
支出 |
中期
長期 |
中 |
市場 |
顧客行動の変化 |
顧客ニーズの変化に伴い、低炭素物流に対応したサービス選好による顧客流出による売上減少 |
売上 |
中期
長期 |
小 |
国内輸送において中古EVの取り扱いを拒否する船会社が増加しており、輸送手段が陸上輸送に限定されることで非効率な輸送を余儀なくされることによる売上減少 |
売上 |
短期
中期
長期 |
中 |
ガソリン・ディーゼル車からEVへの移行に伴い、車両重量が増加する傾向が見られ、積載率の低下による輸送効率の悪化による物流コストの増加 |
支出 |
中期
長期 |
中 |
評判 |
パートナーとステークホルダーの懸念の増大、パートナーとステークホルダーからの否定的なフィードバック |
気候変動に関する取り組み・情報開示が不十分なことにより株式市場や投資家の評価を低下させ、株価の下落や資金調達コスト増加 |
支出 |
中期
長期 |
小 |
気候変動に関する取り組み・情報開示が不十分なことによる顧客からの評価低下、信頼喪失による売上減少 |
売上 |
中期
長期 |
小 |
<物理的リスク一覧>
リスク/機会 |
リスク・機会
・要因項目 |
事業への影響 |
指標 |
時間軸 |
影響
評価 |
物理的 |
急性物理的
リスク |
サイクロン、ハリケーン、台風 |
自然災害の発生によるお預かり車両や自社施設、設備の損傷に加え、道路寸断や従業員避難等に伴う物流サービスの停止 |
支出 |
短期
中期
長期 |
中 |
洪水 (沿岸、河川の多雨、地下水) |
自然災害の発生による、道路寸断や従業員避難等に伴う物流サービスの停止による売上機会の損失(輸送遅延等によるキャッシュフローの変化) |
売上 |
中期
長期 |
中 |
自然災害の発生による自社施設や設備の損傷による資産価値低下 |
資産 |
短期
中期
長期 |
中 |
自然災害の発生による保険料等のコスト上昇 |
支出 |
短期
中期
長期 |
大 |
豪雨(雨、霰・雹、雪/氷) |
豪雨によるお預かり車両や自社施設、設備の損傷に加え、道路寸断や従業員避難等に伴う物流サービスの停止 |
支出 |
短期
中期
長期 |
中 |
慢性物理的
リスク |
温度の変化(大気、淡水、海水) |
平均気温上昇による熱中症対策等対応のため、電気使用量の増加や自動車燃費の悪化、飲料水配布等コストの上昇 |
支出 |
短期
中期
長期 |
小 |
海面上昇 |
海面上昇に伴う、港湾施設や設備の浸水を想定した移転コストの増加 |
支出 |
長期 |
中 |
<機会一覧>
リスク/機会 |
リスク・機会
・要因項目 |
事業への影響 |
指標 |
時間軸 |
影響
評価 |
資源効率 |
生産・流通プロセスの効率化 |
効率的な輸送によるエネルギーコストの削減 |
支出 |
中期
長期 |
小 |
リサイクルの利用 |
輸送機材の整備においてリビルト(再生)部品を活用することで、保守・修繕費などの支出を抑制 |
支出 |
中期
長期 |
小 |
エネルギー源 |
再生可能エネルギーの普及 |
再生可能エネルギーの普及による電気代調達コストの低下 |
支出 |
長期 |
小 |
製品およびサービス |
研究開発および技術革新による新製品・新サービスの開発 |
環境負荷の低減と輸送効率の向上等低炭素社会に適応した輸送サービスを実現することで環境配慮型の物流を重視する顧客から選ばれ売上増加につながる
具体的には以下サービスを提供しています。
・輸送デジタル化(LDX)を推進し、積載率を向上
・陸上輸送から海上輸送へのモーダルシフトを促進
・エンジンを止めていても荷扱いができる新型キャリアカー「Zモデル」の導入
・物流拠点にLED電球を導入
・完成車メーカーのEV化に対応
・電力会社向けのバイオマス発電用燃料の港湾荷役
|
売上 |
中期
長期 |
中 |
市場 |
新規市場への進出 |
EV市場の拡大に伴う輸送・メンテナンス分野による新たな市場からの売上増加
具体的には以下を想定しています。
・EV輸送ニーズの増加
・EV車両における充電管理やバッテリー診断・交換といった新たな車両メンテナンス需要
・国際市場においては、中古EVの海外輸出が拡大傾向にあり、グローバル輸送・取引領域でも新たな収益機会
|
売上 |
中期
長期 |
中 |
<気候変動に係る指標>
(単位:t-CO2)
|
実績(前連結会計年度) |
実績(当連結会計年度) |
GHG排出量(燃費法):Scope1 |
53,466 |
53,961 |
(単位:両)
|
2024年6月末 |
2025年6月末 |
新型輸送機材「Zモデル」累計導入台数 |
42 |
50 |
社会
人的資本に関わる活動
人財確保・育成方針
当社グループは、主に自動車流通やモビリティに関わる総合的なサービスを提供する企業として、人財の確保・育成を経営の重要項目として位置づけており、従業員が会社と共に成長できる組織づくり・取り組みを進めております。
労働人口の減少に伴い、人財不足が懸念される中、乗務職・事務職・整備職等、多様な職種において、新卒者や専門性の高い中途人財の採用・労働環境整備等を通じ、事業成長に必要な機能強化、将来の事業成長を支える人財の確保に努めております。
また、従業員一人ひとりの成長につながる人財育成・教育に取り組むことで、自律的なキャリア形成をサポートし、OJTを通じてより多くの役割を担いながら、業務経験を積み重ねることで成長の機会を作っております。
性別・年齢・国籍等を問わず、多くの人財を成長させることにより、組織の活性化に取り組んでまいります。
社内環境整備方針
当社グループは、今中期経営計画にて「あらゆる品質の向上」を掲げ、人的品質の向上に向けて「健康で安心して、いきいきと働ける環境の実現」を目指して取り組みを進めております。
また、公道を職場とする事業者として、ステークホルダーの皆様に安心・安全を提供するため、安全講習や経験豊富な乗務職による添乗教育を日常的に実施しております。
さらに、多様性確保の取り組みにあたっては、女性乗務職と役員の意見交換等を通じて、多くの要望・改善点等を把握するとともに、一人ひとりの個性・価値観を尊重し、それぞれがやりがいをもって働ける職場環境の充実を図っております。
加えて、物流の2024年問題に対応すべく、分業の推進、付帯業務の削減、ワークライフバランスの向上、働き甲斐のある職場づくりを進めてまいります。